資材置場

いまだ作品の形にならぬ文章を一時保管する場です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

ド・ブロイの異脳狩人/Take1-4

教室に戻ったときにはもう代数の講義が始まっており、《|気晶显示《ディスプレイ》》いっぱいに余弦定理の証明が表示されていた。K.K.が遅刻を謝ると、教師は強張った表情のまま席につくよう指示した。よくあることだ。珍しくもない。 だが、窓際の席まで歩…

ド・ブロイの異脳狩人/Take1-3

だが、彼女の納得に楔を打ち込もうとするかのように、校庭の向こうに2つの影が現れた。はじめK.K.はそのうちひとつ――童顔の若き政治家のほう――のみを認め、飛び上がって手を振った。 「|小博《シャオボー》!」 しかし、クソ真面目な顔して手を振り返す|李…

ド・ブロイの異脳狩人/Take1-2

校門の周囲に溜まって熱い視線をくれるクラスメイトたちへ、さりげない微笑を配り、背筋をピンと伸ばして一声。 「おはよう、みんな」 反応はさまざまだ。舞い上がってうわずった挨拶を返してくる男子。よそ行きの顔で応える女子。照れて無言でそそくさ立ち…

ド・ブロイの異脳狩人/Take1-0

(キャッチコピー)好きでもない男たちに、かわるがわる殺される。 (紹介文) 《|廣汎化《ユニヴァリゼイション》》の波が全地球を飲みこんで、もう半世紀になる。人類の進化と社会組織の理想化を謳った叡智の播種は、結局のところ、新世代の|汚穢《おわ…

ド・ブロイの異脳狩人/Take1 1

「枝の刃は手折られた」 狩人の目がK.K.を捉え、「王に死を。去にし辺より来て往く末へ。明日の明日のその先までも。絶えることなく王に死を」 《枝》が彼女の|心臓《なか》を貫いた。 途端、血という血がK.K.の中で破裂した。熱は滾り身体を巡り、恐怖は狂…

女狩人は王を狩る(仮題) 試し読み1

ケイと初めて出会ったのは、|仁清路《レンチィンル》沿いのゲーム・アーケイド前でのことだった。その時の|黒霧《クロム》はまだ11歳の小娘に過ぎず、力も知恵もないばかりか《疫病ネズミ》のように汚れていて、《恒常灯》の落とされた暗い裏通りに全く似…