「シン・ウルトラマン」感想(ネタバレあり)
結論から言えば、面白くありませんでした。
それで少ししょげていたのですが、単に落ち込んでいても仕方がないので、具体的に面白かった点、つまらなかった点を書き出しておこうと思います。
ネタバレしますのでご注意を。
なお、筆者は幼少期にウルトラマンが放送されていなかった狭間世代であり、過去のウルトラシリーズはほぼ見たことがありません。バンプレストのゲームでブラックRXやνガンダムと相撲とってた、くらいの知識しかないことをご了承ください。
●面白かった点
・ウルトラマンの「異質な存在」感の描写。
宇宙から来た、人間より遥かに上位の、敵か味方か、そもそもコミュニケーション可能かどうかも定かではない、明らかに人類とは異質な「もの」という雰囲気が動きや造形によく出ていた。
筆者のイメージするヒーローとしてのウルトラマンとはちょっと違って、むしろ古き良き「ファーストコンタクト」型SFみたいな感じを受けた。「未知との遭遇」「幼年期の終わり」「ソラリスの陽の元に」とかあのへん。
・アクションシーンのかっこよさ。
ここは本当に良かった。ウルトラマンのパンチひとつとっても、しっかりと腰にタメの入った、意志と破壊力を感じさせる拳になっていた。迫力がすごい。
白眉は偽ウルトラマンとの格闘から空中戦の流れ、そしてメフィラス戦の大立ち回り。この2つがほんとうに熱い。
空を「ついー」と滑るようなウルトラマンの飛行時の挙動もよい。
直立不動のウルトラマンが空中で大回転するシーンなんか面白すぎた。なんなんだあれは。
その他、細かな良いアクションを挙げていけば枚挙に暇なし。
・奇っ怪な宇宙人描写。
ウルトラマン他の宇宙人は、「奇っ怪」という表現がしっくりくる独特の描写をされていて、それがよかった。
たとえば、初登場のウルトラマンが「ぬぼーっ……」とただ立っている姿の、そこはかとない不気味さ。
車の助手席に身じろぎもせず座っている宇宙人ザラブ、という構図の非現実感。
メフィラスとの戦いのさなか、映像の中に「何か写り込んでる……」としか言いようのない形で現れたゾーフィ。あのシーンは何か「見てはいけないものを見てしまった」ような気味悪さがあった。また、メフィラスが何も説明せず、明らかに怯えた様子で即撤退するのも「ヤバさ」の描写としてたいへん良かった。
・メフィラス。
キャラクターの中ではとにかくメフィラスが良かった。
名刺、深く頭を下げて顧客を迎える態度、満面の作り笑い、「私の好きな言葉です」……などなど、じっくりと日本語や文化を(良くも悪くも)学んで来ているのがよく分かる描写の連発。いけ好かない宇宙ビジネスマンの姿が生き生きと描出されていた。
・「河岸を変えよう」
ホントに河岸を変えるやつがあるか!
・ゼットン。
あのデザイン、新鮮ですごくよかった。宇宙要塞ゼットン。かっこいい。
●つまらなかった点
・地球人に無能しかいない。
日本の総理、内閣以下政治家や官僚たちはまともに条約の文面を精査する能力もなく、有事になにひとつ具体策を形にできない。それは現場の主役を引き立てるための「かきわり」だから仕方ないにしても、現場の禍特隊も最序盤とラスト以外はほとんど「現場に到着して感想を述べる」ことしかしない無能揃いで、見ていてイライラしかしない。
まあ、敵怪獣のスペックが異様に高い(MOP2ってそれシンゴジラの背中ブチ抜いたやつやんか……あれを20発ちかく叩きこまれて無傷っていうんじゃ、それこそ核攻撃くらいしか手立てがない……)ので、手をこまねいているのも仕方ないのかもしれない。が、それにしてももう少し頑張ってほしかった。
・画面が単調。
顔面ドアップの構図、いったい何回やるんだ。
ひとつの技としては良いと思うが、そればかり繰り返されると飽きる。
・セリフ回しがダサく、情感がない
全体的にただ状況を説明しているだけのセリフが多く、つまらない。映画なんだから状況は映像で叩きつけてきてほしい。
たとえば、ヒロインの人がブルーシートの中で目覚めたシーンで「なんで酔ってもいないのにブルーシートの上で寝てるの?」というセリフ。これは単に疑問を口にしているにすぎない。これを「またやらかした!? ……ああー飲みすぎたーっ」と変えれば、人物のキャラクター描写を兼ねられる。あるいはそんな人物ではないなら、周囲に集まってきた警官に「酔ってません! 立てるし……ぜんぜん酔ってないですよ!?」って熱弁すれば、真面目な性格が見えてくる。
というのは素人考えでの例だが、要はそのようにセリフの裏側に組み込まれたキャラクター描写がほとんどなくて、それが全体的な人物像の薄さに繋がっていると思う。(翻って、メフィラスだけはその描写が非常に濃く、それゆえ面白いキャラになっていた)
・ウルトラマンの行動原理を盛り上げられない、演出の不備。
ウルトラマンは、なんとなくの感傷によって人類をひいきすることを決めている。それを自己犠牲とヒロインの涙で良い話っぽく見せかけているだけで、全くストーリーが盛り上がらない。
まあ、光の星とやらの住人の標準的な姿を描いてるであろう金色のウルトラマン(ゾーフィ)のほうが理知的で冷静なので、それと対比しての「感傷的な熱血」なのだとは理解できる。
しかし上記の通り地球人が無能かつ不快な人物ばかりで、「こんな人類だったら滅びたほうがいいじゃん」としか思えないため、ウルトラマンに同調できない。むしろゾーフィの意見の方に賛成したくなる。
そう感じてしまうのは、映画序盤からウルトラマンと地球人たちのコミュニケーション描写の積み重ねがなされていないため。観客にも「ああそうだな、こんな人類だから守らないとな。頼むぞウルトラマン!」と思えるような具体的エピソード(というか描写)が、映画にのめりこむためには絶対に必要だった。
・ヒロインに対する(逆にヒロインからの)下品な性的扱い。
他人のケツを撫でる仕草、巨大化したときのカメラワーク、「屈辱的な検査」など、妙に多くてただただ不快。匂いを嗅ぐシーンの、露骨に性行為前のやりとりを想起させるセリフなんかはもう痛々しくて見ていられなかった。なにより、ひとつもエロくない。
こんなのは枝葉末節のことだとは思うが、そんな枝葉まで気になるほど本筋がつまらなかった、というのが正直なところ。
以上で感想を終わります。まだ他にも面白かった点つまらなかった点それぞれあった気がしますが、このくらいしか覚えていませんのであしからず……。