資材置場

いまだ作品の形にならぬ文章を一時保管する場です。

2016-05-31から1日間の記事一覧

ザナリスの昏き竜姫 1-6

* 僕らは走った。どこへ行くべきかも分からずに。とにかく逃げねばならない。外へ、鮫と魔杖兵の戦場から一歩でも遠くへ。だがさんざん通いなれたはずの教室棟は、混乱した僕らにとっては迷宮に等しい。あてもなく彷徨っているうちに、他のクラスメイトとは…

ザナリスの昏き竜姫 1-5

* 狂乱、という言葉は辞書で見た。平和と安寧の権化たるハチノスでは使いどころのない無駄な語彙だった。今日、この瞬間までは。 経験したことのない恐るべき振動が次々に教室を襲い、僕らは泣き叫んだ。逃げなければ! 本能がそう告げていた。僕は新たな知…

ザナリスの昏き竜姫 1-4

僕は小さく鼻を鳴らして、黒板の方に目を向けた。ちょうど先生がやってきたのも、不愉快な会話を打ち切るには好都合だ。無論、また一日、退屈極まりない平和な日常の始まりではあって、その意味では極めて不都合と言えたけれども…… * 1限、下位帝国語文法…